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革製品を持つ際、いちばん気を使うは雨の日だろう。
しかし、鞄が仕事の道具を持ち歩くためのものであるなら
雨の日の使用を避けるわけにはいかない。
そこで、雨の日でも、もっと気軽に使うことができる鞄の皮革素材の研究を行ってきた。そして、できあがったのがワックスドレザーだ。
従来のロウ引きダレスはヌメ革を下地としていたが、ワックスドレザーは、タンニンなめしとクロームなめしを併用した「混合なめし」の牛革を素材とした。こうすることで、タンニンなめしとクロームなめし、それぞれの特長が組み合わさり、型崩れしにくく耐久性のある革になるのだ。また、この混合なめしの牛革は、本ヌメ革と比較すると、遥かにシミになりにくい点も特長である。
その混合なめしの牛革に更に、撥水性を高めるためのロウ引きも施してあるわけだ。ロウ引きはすべて手作業で、液体状のロウを専用の刷毛でザッザッと塗りつける。ひとつとして同じ柄にならない個性的な革ができあがる。
このロウワックスは、使い込むに従いロウが薄くなってくるが、この現象は剥がれるのではなく、革の内部に染み込んでいくことによるものだ。つまり、表面のロウがなくなっても、撥水性は保たれるのだ。
では、鞄のスタイルとつくりについて話してみよう。
「ダレスバッグ」とは、ドクターバッグといわれる、口が大きく開くタイプの鞄のことである。昭和初期アメリカのダレス総監が来日した際、手にしていたことから「ダレスバッグ」と呼ばれるようになった。
ダレスバッグのかなめである口の部分には、オリジナル製造のアルミ枠を使用している。
耐久性と重量を考慮した選択だ。
このアルミ枠を革でまいたものと本体とをつなぐ作業はもちろん『手縫い』になる。
手縫いは、2メートルに切った糸のはじめと終わりに針を通し、
ひとつの穴に向かって左右から同時に針を刺し同時に糸をひいていく。
この作業は、熟練の職人でも力と時間を要する作業で、一度に多くの数を用意することができない。
更に、注目していただきたいのは、ダレスバッグ(くし型)と(ストレート型)の持ち手部分だ。
持ち手は使用時に唯一手の触れる箇所であるばかりでなく、鞄全体の重量が掛かる重要な箇所なので、
中に荷物を入れた状態で長時間持ったときに疲れや痛みがこないことが要求される。
そのために、どのようなフォルムが良いか、クッションの具合、太さ、革の巻き具合まで、
持ち手の研究にも約一年半の年月を費やした。ベストな握り心地のグリップに仕上がっている。
また、型崩れ防止のため、サイドから底に掛けての蛇腹の部分にもピアノ線を包み隠している。
このような、長く愛用いただくことを想定した細心の注意は、細部にまで及んでいるのだ。
素材にもつくりにも徹底的にこだわった。革好きなら、一生にひとつは持ちたい鞄だ。
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強度だけでなく、まるみ、太さ、やわらかさに納得のグリップ。 |
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重なりあった口金を開きやすいよう配慮してある。 |
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背には薄い書類を入れられるポケットがある。 |
底面が直接付かないよう特性の金具が付いる。底からサイドにかけてピアノ線がはいっているので型崩れしにくい。 |
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内側にはストライプの服地を採用。内部はファスナー式ポケットのしきりでで2:1に分かれており、A4サイズの封筒やクリアーファイルなど薄めの書類が倒れずに収納できる。 |
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天井がアール(くし型)になっている分、口部が大きく開く。 |
| つくり手の話 −−−−− 職人:卯野竹男(職人暦41年) |
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この鞄は、何と言っても持ち手と口の部分の「手縫い」が大変なんだよ。
厚い革に太い張りを通すでしょ。これがけっこう力のいる作業なんだ。
それと、革も特殊だから、漉き※の具合をどの程度にするのがいいのか
けっこう考えたね。
今の鞄ができるまでには、何度も試作して相当に時間も掛かったけれど、納得のできるものができたと思っている。
お客さんに長く大切に使ってもらえたら、有難いね。
※漉き:革の厚み調節=革漉き、かわすき |
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一方から針を差し込んだこの状態で、もう片方から針を差し込む。
右端の写真、中央の塊は「松脂」と「白ロウ」でつくった糸にロウをしみこませる為の道具。
職人の自作で、分量などは極秘とされている。 |